書籍「わたしの家系図物語(ヒストリエ)」の説明

内容紹介

いつの時代も根強いブームがある「家系図づくり」。先祖や昔のことを調べるのだから、難しそうなイメージがあります。
そこで本書は、女子高生・美々が家系図づくりに挑戦するという「物語」を挟み、家系図づくりの方法を具体的にリアリティをもって解説しました。
章を追うごとに先祖が判明していく展開は、まるでミステリ小説のよう!
美々と一緒に、時代をさかのぼっていく旅に出ましょう。

著者について

家系図作成代行センター(株)代表。行政書士。北海道釧路市生まれ。
行政書士として開業当初、たまたま家系図作成という業務があることを知る。
興味から自分の戸籍をとって家系図を作ってみたところ、意外な手続きの面倒さ、古い戸籍の文字を読む難しさを知り、以後、専門業務として扱う。

登録情報

単行本: 288ページ
出版社: 時事通信出版局 (2019/3/26)
言語: 日本語 ISBN-10: 4788716119 ISBN-13: 978-4788716117
発売日: 2019/3/26

書籍「わたしの家系図物語(ヒストリエ)」原文 公開

「わたしの家系図物語(ヒストリエ)」は各章が「物語パート」+「ノウハウパート」という構成です。

ここでは「プロローグ」と「第一講  1000年さかのぼる家系調査」の全文と「第二講」~「エピローグ」までの物語部分をすべて公開しています。

「わたしの家系図物語(ヒストリエ)」【目次】

  • プロローグ 初めて見る戸籍
  • 第一講 1000年さかのぼる家系調査
  • 第二講 戸籍以上のことを知るには…──土地と苗字の基礎資料集め
  • 第三講 先祖はどんな生活をしていた?──本格調査1「文献からの情報収集」
  • 第四講 お墓や菩提寺、家紋を調べよう──本格調査2「人からの情報収集」
  • 第五講 世界に一つしかない『自家の歴史書』──家系調査をまとめると、家宝になる
  • プロローグ 先祖が住んでいた地へ

プロローグ 初めて見る戸籍

※全文公開

葛西美々は、生まれて初めて自分の「戸籍」を見た。

戸籍とは、人の出生から死亡までの出来事を記録した公文書のこと。家族 全員が載っている。   

【本籍地】北海道札幌市清岡区上野幌〇丁目○
戸主 葛西啓介 昭和 38 年 11 月 15 日生まれ
妻  葛西晴美 昭和 40 年7月 23 日生まれ
長女 葛西美々 平成 12 年7月9日
二女 葛西清美 平成 15 年1月 26 日  

18 年間――いや、生意気だけどかわいい3つ下の妹とは、 15 年間か――毎 日一緒にいる4人。  

読みなれない戸籍を眺めてみると、両親の結婚した日もあった。

【婚姻日】 平成7年7月 22 日

計算すると、母・晴美の 20 代最後 の日。

「 30 歳前に結婚しよう」という、か わいらしい意図が浮かび上がる。帰っ たらからかおうと思った。長所短所 ともに真面目な母が、言葉に詰まる 姿が目に浮かぶ。  

戸籍の一番上に記載されている 美々の父「葛西啓 けい 介 すけ 」が戸籍の筆頭 者というものに当たるらしい。筆頭 者というのは家族の代表みたいなものかな? と思った。  

父・啓介は自営業。戸籍には職業までは載ってないみたいだな。  

父の両親、すなわち、美々の父方祖父母も載っている。

【父】葛西啓治
【母】葛西巴  

そういえば、祖父母が「ケイジ」と「トモエ」なのは知っていたが、小さ いころから「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼んでいて、名前では呼んだ ことがない。正確な漢字で書ける自信はない。  

先月、祖母の巴が 85 歳で死んだ。後を追うように先週、祖父の啓治が 86 歳 で死んだ。  父・啓介から「おじいちゃん(啓治)が生まれてから亡くなるまでの戸籍を 取ってきてくれないか」と頼まれたのが、昨日。相続だかなんだかんだの手 続きのため、必要だという。  

高校最後の夏休み。大学へはエスカレーター式なので、受験の心配がない。部活動(茶道部)は終了。『やや(かなり)めんどくさいな』と思いつつも素直 な美々は今、最寄りの清岡区役所にいる。

「もっと前の戸籍は釧 くし 路ろ 市役所にありますので、郵送でお取りになるのがい いかもしれませんね」と、戸籍係窓口のおじさん。 確かに、     

【出生地】北海道釧路市
【従前戸籍】北海道釧路市白樺台〇〇番地 葛西啓治

と、書いてある。

「戸主である啓介さんがお生まれになったのが、釧路市。『従前戸籍』という のは、今見ているこの戸籍より古い戸籍で、以前に啓介さんが入っていた戸 21 序章 初めて見る戸籍 20 籍のことですよ」  

父・啓介は、結婚して自分が筆頭者となる前は、祖父・啓治の子どもとし て啓治が筆頭者の戸籍に入っていたということらしい。  

窓口の職員さんは、郵送での釧路市役所への請求方法も教えてくれた。  

郵便局で定額小為替を買わなければならなかったり、返信用封筒を用意し たり、かなり面倒な印象。丁寧に教えてくれたが、理解しきれない部分も あった。本当はもう少し詳しく聞きたかったのだが、込み合っている役所の 窓口を占領するのは気が引けた。  

美々は自分のそんな気の小さいところが、軽いコンプレックスだ。余談だ が、美々の周りの人たちの大半は、それを美徳だと思っていることに美々自身は気づいていなかった。そこに気づかない美々は、結構みんなから好かれ ていたが、そのことにも気づいてはいなかった。

それはともかく、長所短所ともに真面目な美々は、両親の命令を遂行しな かったことはほぼない。こんなときは、長所短所ともに自由で、両親の命令 を遂行したことがほとんどない妹の清美が、うらやましくなる。

『おじいちゃんの戸籍を取ったら、おじいちゃんのお父さん……つまり、今 のところ名前も知らない3代前のひいおじいちゃんのことがわかるのかな?』 などと考えていたら、掲示板のポスターが目に入った。   

戸籍から作る家系図作成講座――1000年前へルーツの旅

普段なら気にもかけない、「戸籍」という文字が目に飛び込んだ。   

8月 10 日 午後 14 時~
全4回 受講料各1000円
清岡区民センター主催
講師:筧探(かけい さぐる)

清岡区民センターは、ここ清岡区役所の3階。8月 10 日午後 14 時までは、 あと3分。