ポイント3 「戸籍調査」よりもっとさかのぼった調査って?

「戸籍調査」の限界点が江戸末期から明治初期、おおよそ150~200年前、世代にすると平均して4~5世代上。

それよりもっとさかのぼる調査を、「戸籍以上の調査」とか「現地調査」、あるいは「永代(えいたい)調査」などと言います。

では、1000年前まで家系図を作るとはどういうことかについてです。

■1000年たどる家系調査の全体像

大まかに家系調査の全体像をお伝えすると

古代(1000年以上前)

 平安時代

 鎌倉時代

 室町時代

戦国時代(約500年前)

江戸時代(約400年前)

明治時代(約150年前)

大正時代

昭和時代

平成時代(現代) と、いう現代から1000年以上前までの時間の流れがあります。

江戸末期~明治初期まで、150~200年前までは戸籍調査でわかります。

平均して4~5代上のご先祖様までわかります。

次に江戸時代(150年~400年前の250年間)の調査ですが、ここでの調査は菩提寺又は本家の過去帳が重要になります。

その他に墓石・宗門改帳、武士であれば武士の系図が重要です。

過去帳というのは、ご先祖様の戒名(かいみょう、死後のお名前)・俗名(ぞくみょう、生前のお名前)・歿年が書かれています。

江戸時代初期(1664年)に寺請制度というのが始まり基本的に全国民の過去帳が菩提寺に備え付けられるようになりました。

また、江戸時代は人の移動に制限があり、お寺を変えることにも制限があったので、一つの寺に代々のご先祖様が葬られている可能性が非常に高いです。

この過去帳を入手することで江戸初期(350~400年前)まで一気にさかのぼり、戸籍調査の上に7~10代程度のご先祖様を判明させることができます。

また、武士であった場合藩に提出した武士時代の系図(藩士系図)が見つかれば過去帳に頼らずとも一気に江戸初期(350~400年前)までさかのぼれる可能性があります。

ここまでが下からさかのぼって行く調査で、同時に天皇家、あるいは藤原氏(いわゆる源平藤橘)から下ってくる家系の流れを調べたいところです。

ここで言う下ってくる家系の流れとは、中世古代の系図文献などで、ある地域のある苗字がどういう経緯で発祥し、どのような人物を経て現在に至っているのかを調べる調査です。

1000年前まで一代も漏らさず全てのご先祖様が判明して、つながるということはどの家でもかなり難しいです。

※難しいですが経験上30~50家に一軒は可能です。

特に戦国時代は資料が少なくこの間の空白を埋めれる家は非常に少ないです。

間に何代か、数十年か数百年かの空白ができるかもしれませんが1000年前からの大きな家系の流れは把握できる可能性はどの家でもあります。

いずれにせよまずはどの家でも「戸籍調査」が絶対に必要です。

その上でさらに関心あれば「戸籍以上の調査」方針を立てることが重要です。

1、一番古い戸籍を見て、ご先祖様が江戸末期~明治初期に住んでいた場所を確定させる。

2、ご先祖様のお名前やお住まいだった地より、暮らしぶりや武士かどうかを推測する。

3、戸籍以上にさかのぼれる可能性を推測し、以降の調査方針を立てる。

と、いう流れが必要です。

※「1000年たどる家系調査の全体像」は動画でもさらに詳しくご説明しております

■「戸籍以上の調査」方針の立て方

「戸籍調査」以上に家系をさかのぼるには、下記のような調査があります。

・基礎的な苗字辞典や地名辞典、旧土地台帳を集めること

・地元の郷土誌や古文書の調査

・中世古代系図文献の調査

・親族様含め本籍地付近に住む同姓の方にアンケートを取り菩提寺や家紋、当家との関係、過去帳の有無を確認

・菩提寺に、お墓や過去帳の有無の確認

各家によって調査方針や難易度は様々ですが、上記すべてを行った方がいいです。

【「戸籍以上の調査」も時間との勝負】

「戸籍以上の調査」の中で、今すぐにやらないとならない調査と、いつか時間ができたときに行ってもいい調査が、あります。

例えば、急がなければならないのが、ご先祖様の菩提寺やお墓がわからなくなっている場合。

本籍地付近の同姓やお寺にお手紙で情報提供を求める必要があります。

古きを知る方がだんだん少なくなっています。

地元の同姓にアンケートを取ると、

「もう数年早ければ古老がいたので色々聞けたのだが…」

という回答が年々多くなっています。

お寺の住職様も代替わりが進むと一層対応いただくのが難しくなります。

最近では、お寺の過去帳の閲覧を原則認めないというお寺も増えてきました。

今ならわかるかもしれないご先祖様のお寺やお墓の調査は、一日ごとに難しくなり、数十年後のお子様やお孫様の代にはほぼ不可能になります。

また、上記のような人からの情報だけでなく地元の人名録や武士だった場合の藩士名簿の調査も急がなければなりません。

個人情報保護法の拡大解釈で、江戸期・明治期の人名が載った文献や古文書(例えば人名録や戸長名鑑のような文献)が年々見れなくなっています。

国立国会図書館ではすでに一部の資料が閲覧禁止になってきておりこの動きは早晩全国に広がると思われます。

逆にさほど急がなくともいい調査もあります。

例えば、中世古代の系図文献から、古い時代のルーツを調べるような調査。

あるいは、地元の郷土誌の調査はさほど急がなくとも大丈夫です。

このような文献は、今後閲覧禁止になるようなこともないでしょうし、いつか時間ができたときにライフワークとしてとっておいたり、あるいは将来お子様やお孫様に託してもいいかもしれません。

各家によって調査方針や難易度は様々と書きましたが、もうちょっと具体的にお伝えしますね。

数千家系の戸籍を見て調査方針を立ててきた結果、ある程度パターンがあることが把握できています。

おおよそ6パターンに分かれる「戸籍以上の調査」方針

各家によって調査の方針は大きく変わりますが、大まかに下記の6パターンに分かれます。

①お寺お墓が分からなくなっているので、同姓からアンケートを取る必要がある。

②菩提寺に過去帳の有無を確認する必要がある。

③地元の旧家なので、地元の郷土資料や人名録の調査が必要。

④江戸時代武士の家系なので藩政資料の調査が必要。

⑤全国的に少ない苗字なので、全県、あるいは全国へのアンケート調査が必要。

⑥その他、上記に当てはまらないケース。

たいていの家系は上記の2~3つに該当します。

それでは、実際に調査を行ったらどういうことがわかるか、具体例をお伝えしますね。

※郷土資料で手がかりが見つかった例(見つからなかった例)

◆渡辺の母方。

葛西家先祖が住んだ青森県板柳村の郷土誌を見てみました。

「葛西家は板柳村の代表的な家であったが残念ながら記録は残っていない」と読み取れる記載があり。

※記録が残っていないという事実がわかったことも立派な調査結果です。

その後の方針が立てられます(…やっぱり残念ですが)。

◆渡辺の妻。

玉置家和歌山県白浜町です。

「副戸長 玉置又平」とご先祖様の直接の名前の記載あり(いいなぁ…)。

今後の調査に非常に有益な手掛かりです。

その他お調べしたお客様の例では

・漁業関係の網元であることが判明

・有名な農家で米の品評会で表彰歴もあることが判明(表彰状の画像あり)

・力な家の記録に「小作○○」と記載あり。

・江戸期に村を切り開いた人物と同姓であることが判明。現在の同姓の数などより、本家筋であることがほぼ確定。

などなど…ご先祖様の名を文献・文書に発見する可能性は意外と高いです。

※同姓へのアンケート調査で手がかりが見つかった例

◆渡辺の母方。

葛西家ご先祖様の住んだ地でしか聞けないような、ご先祖様の謂れやルーツを聞くことができる場合も多いです。

右の例は見知らぬ親族からのお手紙の返信で「家紋(三つ柏)」「菩提寺(青森県弘前市)」「お墓(本家の墓と並ぶ)」「聞き伝え(戸籍上は青森から北海道に渡っているが地元では幼少の時に亡くなったと伝えられている。)」 などがわかりました。

【やってみなければわからないことだらけの「戸籍以上の調査」】

「戸籍調査」のように、国の公的資料である程度の成果がほぼ保証されているわけではないので、いろんなケースが考えられます。

郷土誌に載っているかどうかは調べてみないとわかりません。

同姓の方にアンケートを送った場合、どの程度協力いただけるかもやってみないとわかりません。

お墓や過去帳が現存するかも調べてみないとわかりません。

例えば、遡るに関して一番いいケースは本家やお寺に過去帳があり400年前(江戸時代初期)まで判明というケース(武士であれば藩政資料に江戸時代の記録があること)。

もっといいのが地元に当家の江戸時代以前の具体的なルーツの伝承(源平藤橘、藤原氏のいずれであるなど)が残されていて1000年以上前まで判明するケース。

決して多くはないですが、こういうこともあり得ます。

逆に、情報が無いこともあり得ます(実際には全く何もわからないとういうことは少ないですが)。

菩提寺や本家は確定できたが、過去帳やお墓は消失して無くなっている、というケースもあり得ます。

ご先祖様の記録が焼失しているのはとても残念ですが、そのような場合でもただ残念がるのではなく

「ずっと気になっているよりも、無いことがわかってよかったかもしれない」

と、前向きに受け止める心構えが必要かもしれません。

成果がないことも一つの成果と受け止める覚悟が必要かもしれません。

とにかく、心配なのが戸籍に保管期限があったように「戸籍以上の調査」も時間との勝負の面があります。

この機会にやれることはすべてやってみる、と思われた際はなるべく早くご動きましょう。

特に、ご先祖様のお寺やお墓が分からなくなっている場合は、手遅れにならないうちにアンケート調査だけでも行っておくといいと思います。

※同姓へのアンケート調査の具体例私の母方葛西家は「東北から来たらしい」という聞き伝えだけしか残っておらず、家紋もお寺もお墓も全く分からない状態でした。

まずは「戸籍調査」で江戸時代に青森県の農村地に住んでいたことがわかりました。

その地域を電話帳で調べると数十件の葛西姓の方がいましたので、

「北海道に渡った際に家系についてわからなくなってしまいました。ウチの家系をご存知でしたらお教えいただけますでしょうか?」

と、すべてにお手紙を出してみました。

その結果、90歳を超えた地元の同姓の方がウチの家系を知っていてくれて、親切なお返事を下さったので、先に書いたように、今まで知らなかった家紋やお寺・お墓がすべて判明しました。

今アンケート調査を行っていなかったら、ご先祖様のお寺やお墓は判明しなかったかもしれません。

近いうちに子供を連れてお墓参りに行って来ます。