これまで私は、さまざまなメディアで家系図の話をさせていただく機会がありました。
田村淳さん
小山薫堂さん
宇賀なつみさん
関根麻里さん
松任谷正隆さん
ピーター・バラカンさん
ココリコ田中さん
パンサー向井さん

など、多くの方と家系図についてお話しさせていただきました。
ただ、そのときによく聞かれるのが、まずこの質問です。
「なぜ行政書士が家系図を作っているのですか?」
特に松任谷正隆さんは、私の経歴や行政書士になった経緯、そしてなぜ家系図の仕事を始めたのかを、とても丁寧に聞いてくださいました。
【家系図作成代行センター代表/行政書士 渡辺宗貴 × 松任谷正隆】
トランスコスモス presents
「松任谷正隆の…もっと変なこと聞いてもいいですか?」
そして、この話を聞いたメディアの方や出版社の方、友人たちからも、「その話、面白いですね」と言っていただくことがよくあります。
つまり、多くの方が興味を持つのは、家系図そのものだけではなく、「なぜ行政書士が家系図を作っているのか」「家系図業界はどんな世界なのか」という部分でもあるようです。
そこで今回、家系図そのものの解説ではなく、家系図業界の歴史、業界の実態、あまり表に出てこない裏話について、シリーズとしてまとめてみることにしました。
家系図業界の裏話①
家系図業者の9割は家系図を知らない?
行政書士が語る家系図業界の実態
「家系図を作ってくれる業者なら、当然、家系図のことをよく知っているはず」
多くの方は、そう思われるかもしれません。
ですが、実際の家系図業界は、少し事情が違います。
もちろん、家系図に関する専門知識を深く持っている業者もあります。
しかし一方で、戸籍は扱えても、苗字・家紋・地域史・古文書・家の歴史といった、本来家系図に欠かせない知識までは持っていない業者も少なくありません。
少し強い言い方をすれば、家系図業者の多くは
「戸籍は扱えても、家系図そのものにはあまり詳しくない」
というのが実情です。
今回は、あまり表に出てこない家系図業界の実態について、できるだけわかりやすくお話ししていきます。
家系図作成業務は大きく3つに分かれます
まず最初に知っていただきたいのは、「家系図作成」とひとことで言っても、実際には業務が大きく三つに分かれているということです。
一つ目は「戸籍調査」です。
.jpg)
これは現在もっとも一般的な家系図作成業務で、戸籍を集めて先祖をたどり、家系図の形にまとめていく仕事です。
多くの場合、江戸時代末期、だいたい150年から200年ほど前までさかのぼることができます。
世代でいうと、4代前から5代前くらいまでが一つの目安になります。
二つ目は「戸籍以上の調査」です。

これは戸籍では届かない、そのさらに前の時代を調べる仕事です。
古文書、菩提寺の過去帳、墓石、郷土資料、家紋、苗字、土地の歴史、口伝などをもとに、家の歴史を400年、場合によっては1000年以上たどっていきます。
三つ目は「巻物・折本・掛軸・冊子製本」といった、家系図を残すための仕立てや製本です。

調査結果をどのような形で保存し、後世に残すかという部分です。
つまり、家系図作成業務には
・調べる仕事
・読み解く仕事
・残す仕事
この三つがあるわけです。
同じ「家系図作成」でも中身はかなり違います
ところが、実際の家系図業者の多くは、この三つすべてを高いレベルで行えるわけではありません。
ここに、家系図業界のわかりにくさがあります。
戸籍調査はできても、戸籍以上の調査はできない。
戸籍調査はできても、苗字や家紋の読み解きは弱い。
戸籍調査はできても、保存のための仕立てや製本はできない。
そういう業者が大半なのです。
なぜそうなるのか
では、なぜこのような状況になるのでしょうか。
その大きな理由は、家系図業者の多くが行政書士だからです。
戸籍を取得して家系図を作成する業務は、長い間、行政書士が担ってきました。
相続の際に戸籍を集める業務や、相続関係図を作る業務の延長として、家系図作成を取り扱うようになった行政書士が多かったのです。
そのため、家系図業界には行政書士が非常に多くなりました。
これは決して悪いことではありません。
行政書士は戸籍の読み方や取得手続きに慣れているため、戸籍調査を正確に進める力があります。
ただし、ここで一つ重要なことがあります。
行政書士だからといって、家系図の専門知識まで持っているとは限らないということです。
行政書士の資格と家系図の専門知識は別です
行政書士試験は、民法や行政法などを中心とした法律系の試験です。
一般知識も問われますが、苗字、家紋、地域史、古文書、寺院調査、郷土資料の読み方といった、家系図の専門知識を学ぶ試験ではありません。
つまり、行政書士の資格を持っていることと、家系図に詳しいことは別の話なのです。
戸籍を取る力と、家の歴史を読み解く力は、似ているようで実はかなり違います。
ここを混同してしまうと、「行政書士だから家系図に詳しいはず」と思って依頼したのに、思ったほど深い話が聞けなかった、ということにもなりかねません。
家系図作成は比較的新しい業務です
さらに言えば、家系図作成業務そのものが、行政書士業務の中では比較的新しい分野です。
ここ15年から20年ほどの間に広がってきた仕事であり、昔から確立された専門分野というわけではありません。
相続で戸籍を扱う行政書士が、関連業務として家系図作成を始めたという流れが多いため、「戸籍調査まではできるが、その先は弱い」という業者が自然と増えました。
ですから現在の家系図業界では、
・戸籍の収集と家系図作成
・戸籍以上の調査
・苗字・家紋・地域史の分析
まで含めて総合的に見られる業者は、それほど多くありません。
依頼する側が考えるべきこと
では、依頼する側はどう考えればよいのでしょうか。
大切なのは、「家系図業者」とひとまとめにせず、自分が何を求めているのかをはっきりさせることです。
たとえば、
「とにかく保存期限が切れる前に戸籍だけ集めておきたい」
という方であれば、戸籍調査を中心にしている業者でも十分かもしれません。
一方で、
・戸籍より前までたどりたい
・先祖の職業や身分を知りたい
・地域の歴史まで知りたい
という方であれば、戸籍以上の調査までできる業者を選ぶ必要があります。
また、
「巻物にしたい」
「きちんとした形で残したい」
という場合は、製本や仕立てに強い業者を選ぶことも重要です。
つまり、家系図業者選びで大切なのは、価格だけではなく、その業者が何を得意としているかを見ることなのです。
上手に業者を利用するという考え方もあります
また、「全部を業者に任せるのではなく、できることは自分でやりたい」という考え方もあります。
たとえば、戸籍調査だけ業者に依頼して、その後の戸籍以上の調査はアドバイスを受けながら自分で進めるという方法もあります。
あるいは、専門知識が必要な部分だけ業者に任せて、郷土誌を読んだり、現地を訪ねたりする部分は自分で行うこともできます。
家系図作成は、依頼するか、自分でやるか、その二択ではありません。
上手に業者を利用する、という考え方もあるのです。
まとめ
結局のところ、家系図業界は「家系図作成」という同じ看板を掲げていても、その中身はかなり違います。
戸籍調査が得意な業者。
戸籍以上の調査が得意な業者。
巻物や冊子など、形に残すことが得意な業者。
それぞれに強みがあります。
ですから、「家系図業者の9割は家系図を知らない」という言い方は少し強い表現ではありますが、少なくとも「家系図業者ならみんな同じ」というわけではありません。
むしろ、
何を知っていて
何ができて
どこまで調べられるのか
には、大きな差があります。
家系図を依頼する際には、その違いを知ったうえで選ぶことがとても大切です。
次回は、では実際に全国に家系図業者はどれくらいあるのか、家系図専業の業者は何軒くらいなのか、そのあたりをもう少し具体的に見ていきます。
無料PDFプレゼント
家系図を作る前に知っておきたい
「7つのポイント(2026年版)」を
無料で公開しています。
・家系図はどこまで遡れるのか
・戸籍調査とは何か
・費用はいくらかかるのか










